夢の舞台「ダカール・ラリー」への挑戦
2026年1月3日から17日までサウジアラビアで開催された第48回ダカール・ラリー。藤原選手は、3ヶ年計画で参戦権を獲得し、ついにそのスタートラインに立ちました。彼が選んだバイクは、日本メーカー「ホンダ」の特別な一台、HRC(ホンダ・レーシング・コーポレーション)が開発した競技用パーツが装着された世界限定50台のCRF450 RX Rallyです。この高い信頼性と快適性を持つマシンが、藤原選手の挑戦を強力に後押ししました。
藤原選手をサポートしたのは、イタリアの名門RS moto RACING。豊富な経験と高い技術力を持つこのチームは、マシンのメンテナンスはもちろん、ライディングや戦略のアドバイスまで行い、大会唯一の日本人ライダーとして単身挑んだ藤原選手にとって、非常に心強い存在でした。
想像を絶する過酷なコースとアクシデント
2026年ダカール・ラリーのスタート・ゴール地点は紅海の港町ヤンブー。全行程7,983kmのうち、4,737kmがSS(競技区間)でした。コースは100m級の砂丘、砂の崖、岩だらけの河川敷など、一瞬たりとも気が抜けない難所の連続。GPSは使用できず、頼りは直前に渡される「ロードマップ」だけという状況です。メカニックのサポートを受けずに2日間走り切る「マラソンステージ」も設定されており、ライダーは簡易ビバークで自らテントを張り、マシンの整備まで行う必要がありました。
藤原選手は、スタート直後からその過酷さを実感。「今の走行ペースを10%上げたら、途端にヤバい世界に入って生きて帰れないかもしれない」と感じたそうです。
そして試練は突然訪れました。ステージ2で10m以上の砂の崖から落下し、顔面を強打。眼窩底骨折を負い、以降はものが二重に見える「複視」に苦しめられながら走行しました。さらにステージ5では、砂に隠れた岩にヒットし転倒。ドクターヘリが降り立つほどの大クラッシュで、左の鎖骨を骨折。「レースは勧められない」という診断が下されました。
満身創痍で辿り着いたゴールポディウム
骨折と複視という絶望的な状況にもかかわらず、藤原選手はレース続行を決断。「順位を追うのはやめて、完走することだけに集中しよう」と心に誓いました。テーピングで患部を固め、路面のギャップを超えるたびに激痛が走る中でも、トライアルで培ったライディングスキルと3ヶ年計画での経験をフル活用し、ひたすらゴールを目指しました。
そして迎えた最終日。最後のステージで転倒するアクシデントに見舞われながらも、泥だらけになりながら138kmを走り切り、無事にフィニッシュエリアに到着。夢にまで見たゴールポディウムに立つことができました。
藤原選手は、「ダカール・ラリー全体が僕の完走をサポートしてくれているように感じるほど、多くの支えを頂きました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。世界中からの応援が、私を守ってくれたんだと思います」とコメントしています。
藤原慎也選手からのメッセージ
藤原慎也選手は、完走を達成した喜びと感謝の気持ちを次のように述べています。
「このたび、3ヶ年計画で目指してきた2026年ダカール・ラリーにおいて、無事ゴールポディウムに立ち完走者になることができました。スタートから15日間、総走行距離7,983km。そのうち、目の周りと鎖骨の骨折を抱えた状態で走行した距離は5,214kmに及びました。
ダカール・ラリーは、世界で最も過酷なモータースポーツと称される大会です。今大会においても、ステージ2での大きな転倒による眼窩底骨折、ステージ5でのクラッシュによる鎖骨骨折など、数々の困難に直面しました。多く多く転倒しました。一時は、ドクターから『継続走行は困難』と告げられる状況でもありました。
それでも最後まで諦めず、走り続け、完走という結果を残すことができたのは、ひとえに日頃よりご支援・ご声援をくださっているスポンサー各社の皆様のお力添えがあったからに他なりません。
本来であれば、レーサーとして万全なコンディションで全力を発揮し、戦い抜きたいという思いがありました。その悔しさは今も残っています。しかし、負傷した限られた条件の中でも、その時点での自分にできる“ベスト”を尽くし、最後まで逃げずに挑み切れたことは、大きな経験と誇りになりました。
過酷な環境下でも高い信頼性と性能を発揮してくれた ホンダCRF450 RX Rally、そして常に最善を尽くしてくれた RS moto RACING チームの存在も、完走に欠かせない要素でした。
夢に向かって走り続けてきた。ダカールをフィニッシュするために走った。
果てなき砂漠を越えてきた。何度もヘルメットの中で泣いた。地球上で最も過酷なレースを完走した。
諦めない心で戦った。多くの応援があった。多くの支えがあった。だから、ここに立てました。
本プロジェクトをご支援いただいた株式会社松尾製作所をはじめとするスポンサー各社の皆様、ダカール・ラリー運営・関係スタッフの皆様、そして常に励ましてくれた世界中の人々、そして家族に、心より御礼申し上げます。
この完走は、決して一人では成し得なかった成果です。皆様とともに掴んだ結果です。
ダカール・ラリーは、単なるレースではなく、『挑戦し続ける者だけが辿り着けるロマン』だと、改めて実感しました。
今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
心より感謝を込めて。」
ダカール・ラリー公式ウェブサイトはこちら: https://www.dakar.com/en
SMRPプロジェクトとは
藤原慎也選手がダカール・ラリー完走を目指す「SMRP(Shinya Fujiwara Matsuo Manufacturing Racing Project)」は、2024年4月に始動した3ヶ年計画のプロジェクトです。国内でのトレーニングに加え、FIM Red Bull Erzbergrodeo、世界ラリーレイド選手権「モロッコ大会」、アフリカエコレース、ISDEなど数々の国際レースに参戦し、着実に経験を積んできました。そして2025年7月、ついに2026年ダカール・ラリーの参戦権を正式に獲得しました。
SMRPプロジェクトの詳細はこちら: https://smrp-racing.com
松尾製作所について
SMRPプロジェクトを全面サポートしているのは、株式会社松尾製作所です。1948年創業の同社は、自動車・家電製品用精密部品の製造を手がける企業で、「自由な発想、自由な職場」、「仕事は楽しむもの」という考え方を軸に、実験・開発・設計に取り組んでいます。大学との共同研究や世界トップクラスの学会への参加など、社内外で幅広い活動を展開しています。
株式会社松尾製作所のウェブサイトはこちら: https://www.kk-matsuo-ss.co.jp/